作品の良し悪しは好みの問題も大きいが、作品に込められたコンセプトと建築に対する考え方については、最も共感できる建築家のひとり。同世代ということもあり、その活躍には特に注目している。
著者によると、現代とは情報(=新しい単純さ)と環境(=コントロールできない他者)の時代であり、未来の建築のための五つの問を投げかけている。
1.場所としての建築・・・場・ランドスケープ
2.不自由さの建築・・・可能性
3.形のない建築・・・不完全さ・許容力
4.部分の建築・・・局所的秩序
5.あいだの建築・・・関係性
コルビュジェの近代建築の五原則を意識してのことだろうが、「原則」ではなく「問」としているところが、時代性というか、国民性を感じるところ。
詳細は省略するが、「弱い建築」「関係性」「距離感」「居場所」「新しい座標系」「曖昧さ」などを鍵語に建築の初源へと思考を遡っているのが興味深い。
コンセプト(言葉)と作品(建築)が乖離していると感じる建築家が多い中、藤本氏は両者の「あいだ」に注目することにより、その矛盾を違った形で解消しようとしているように思える。そこには、西洋キリスト的な二項対立的発想ではなく、東洋仏教的な「空」的発想が感じられる。
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藤本 壮介
1971年北海道生まれ。1994年東京大学工学部建築学科卒業。2000年藤本壮介建築設計事務所設立。現在東京大学特任准教授、慶應義塾大学、東京理科大学非常勤講師。主な作品「伊達の援護寮」(2003、JIA新人賞、AR AWARDS入賞)。「安中環境アートフォーラム国際設計競技」(2003、最優秀賞)。「T house」(2005、東京建築士会住宅建築賞金賞、AR AWARDS入賞)。くまもとアートポリス設計競技「次世代モクバン」(2005、最優秀賞)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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