安村崇の《日常らしさ》はキヤノン写真新世紀でグランプリを受賞(1999年)した作品シリーズです。写真集『日常らしさ』には新作を加えた1997年から2005年にわたる作品がまとめられています。
主に滋賀県にある実家で撮影されたこの《日常らしさ》について、作家は受賞時に次のようなコメントを寄せています。「普段は日常に溶け込んでいて、とりたてて気にもとめない身の回りの光景。その光景を写真に置き換えていくと、その写真に「日常らしさ」が見当たらないことに気がつきました。まるで幻であったかのように消えているのです」。
日常のふとした歪みを写真を撮ることによって確認しようとするその姿勢、世界の「裂け目」を露わにするそのユニークなまなざしは、安村の作家としての出発点でもあるこの《日常らしさ》にはっきりとあらわれ、以降に発表されることになるシリーズ《自然をなぞる》《せめて惑星らしく》にも受け継がれていきます。そして、批評性を含むこの「裂け目」は、非常に滑稽/キッチュで、外国映画のインチキな日本の描写を見るかのような、思わず吹き出してしまう楽しさをあわせ持っています。
収録写真点数=カラー36点
収録テキスト(和英併記)
マーティン・ヤッキ「静かな表面のスキャンダル」
八角聡仁「モノノケの世界への友愛」
倉石信乃「実家、あるいは表象のステージ──安村崇の《日常らしさ》」
ブックデザイン=池田進吾
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