マクドナルで隣り合わせた男の携帯電話を手に入れてしまった俺は、なりゆきでオレオレ詐欺をしてしまった。そして俺は、気付いたら別の俺になっていた。上司も俺だし母親も俺、俺でない俺、俺ではない俺、俺たち俺俺。俺でありすぎてもう何が何だかわからない。電源オフだ、オフ。壊ちまうす。増殖していく俺に耐えきれず右往左往する俺同士はやがて―。孤独と絶望に満ちたこの時代に、人間が信頼し合うとはどういうことか、読む者に問いかける問題作。
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星野 智幸
1965年ロサンゼルス生まれ。早稲田大学第一文学部を卒業後、新聞記者をへて、メキシコに留学。97年「最後の吐息」で文藝賞を受賞。2000年「目覚めよと人魚は歌う」で三島由紀夫賞、03年『ファンタジスタ』で野間文芸新人賞を受賞した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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俺らは山登り気分を楽しみたかったので、いかにも山道な稲荷山コースを歩いた芽吹いた葉が広がりきって、山全体が鮮やかな若緑に光っている。俺は、お茶漬けの中を浮遊する具のような気分になった。
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