ニューヨークが選んだ村上春樹の短篇集、2005年3月31日、日本上陸!
1993年Knopf 社で編集、出版された短篇選集『The Elephant Vanishes』は英語圏で好評を博し、ロング・セラーとなっている。その日本語版がついに刊行! 英語版から著者みずから翻訳を試みた、新バージョンの「レーダーホーゼン」など初期短篇17作品。更にNew Yorkerデビュー当時を振り返る書下ろしエッセイも収録した話題作。
ニューヨーカーに選ばれ、世界で読まれ、日本に再上陸した初期短篇の数々。アメリカデビュー当時を語るエッセイなど話題満載の短篇集。
「村上春樹はまずなにを読めばいい?」「短篇をいくつか読みたい。」そんなあなたへ贈る、ニューヨーカーが選んだ村上春樹の初期短篇集。
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村上 春樹(むらかみ はるき、1949年1月12日 - )は、日本の小説家、米文学翻訳家、エッセイスト。京都府京都市に生まれ、兵庫県西宮市・芦屋市に育つ。早稲田大学第一文学部演劇科卒、ジャズ喫茶の経営を経て、1979年『風の歌を聴け』で群像新人文学賞を受賞しデビュー。当時のアメリカ文学から影響を受けた乾いた文体で都会生活を描いて注目を浴び、村上龍とともに時代を代表する作家と目される。
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もちろん今では、その時彼女に向かってどんな風に話かけるべきであったのか、僕にはちゃんとわかっている。しかし何にしてもあまりに長い科白だから、きっと上手くはしゃべれなかったに違いない。このように、僕が思いつくことはいつも実用的ではないのだ。
僕が彼女に出会ったのは九月も終わりに近づいた頃だった。その日は朝から晩まで雨が降りつづいていた。その季節によく降るような細くてやわらかで単調な雨だった。そんな雨が地表に焼きついた夏の記憶を少しずつ洗い流していくのだ。全ての記憶は溝に伝って下水道や川へと流れこみ、暗く深い海へと運ばれていく。
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